リスト

ピアノ教育に携わる人であれば、
ぜひ読んでおきたい一冊ではないでしょうか。

かなりの良書だと感じました。

★「1冊3分で分かる!ピアノ教本マガジン」vol.351(2015年4月15日配信)より

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『 フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか 』 浦久俊彦・著

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今日ご紹介するのは、

「フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか」

という書籍です。

リストといえば、マゼッパやラ・カンパネラなど
超絶技巧のピアノ曲のイメージが強いかもしれません。

またこれだけ有名なのに、その人間像までは
よく知られていない作曲家ともいえます。

今回は、そのリストに関する書籍のご紹介です。

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◆今日のチェックポイント◆
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巻頭の「まえがき」から引用すると、

「フランツ・リストの名は、クラシック音楽を聴いたことが
あれば、誰もが知っている。ところがその音楽を深く知ろう
とすると、急にわからなくなる(中略)なぜ、僕はこの本を
書こうとしたか。リストのことをもっと知ってほしい。そう
思って書きはじめたわけではない。なぜ、リストはここまで
語られないのか。なぜ、リストは理解されないのか。その理
由は何なのか。それが不思議で、書きはじめた」

とあります。

巻末にあるプロフィールによると、本書の著者は、
音楽プロデューサーとしてご活躍の方。

19歳で渡仏、パリで音楽学や哲学などを学ばれた、
とあります。

本書のはじめでは、リストの誕生から
青年時代までを時系列に記してあります。

その後は、リストにまつわる「キーワード」を中心に、
その時代や彼の活動からリストを紐解いていきます。

参考までに章立てをご紹介しましょう。

【第一章】神童の神話
【第二章】スキャンダルはアーティストのトレードマーク
【第三章】巡礼の年
【第四章】失神したがる女たち
【第五章】「ピアニスト」の誕生
【第六章】グランドピアノはなぜ大きくなったのか
【第七章】ショパンvs.リスト
【第八章】四百人の弟子と後継者たち
【第九章】知られざる晩年の肖像

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◆(2)リストの肖像から19世紀のヨーロッパが見えてくる

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著者が「あとがき」にこう書いていらっしゃいます。

「リストは、僕にとって、
ずっとショパンの陰に隠れた存在だった」

これは私にとっても同じでした。

ドイツ留学時代に取り組んだショパンとリスト。

ショパンの音楽に憧れその真髄に迫ろうと努力する自分。
反面、リストの音楽に何か満たされぬものを感じる自分…。

今となっては、その理由が分かります。

ショパンの人間性や作品は貪欲に研究を重ねた一方、
リストについてはほとんど何一つ知らなかったのです。

本書にもあるように、リストに関する
書籍は驚くほど少ない。

私のリストに対する無知はそこからきているのかもしれません。

いずれにしても、私のなかでの「リスト像」は、
この本によって大きく変わりました。

リストの中にある強さや繊細さ、慈悲深さや高潔さ、
音楽や芸術、人類に対する大きな思い…

読後にはそうした「大きなギフト」をリストから
受け取ったような感覚に浸りました。

ちなみに、本書を読んで心に残った部分を挙げてみると、

○父親を亡くしたわずか15歳のリストは
母親を養い自力で生活していた

○リストには卓越した「会話術」の能力があった

○「ラ・カンパネラ」には通常演奏される版より
難易度の高い演奏不可能と思わせる版がある

○リストは「エラール」という最強の武器を
手にしてピアノ界の覇者となれた

○リストとショパンは何度も連弾で演奏会に出演していた

○リストの演奏を聴いて失神したという話は、
ブルジョア女性を取り囲む「時代背景」に答えがある

○8年間で1000回公演したヨーロッパツアーでの莫大な収益は
芸術振興や学生、孤児のために惜しげもなく寄付された

○リストは弟子に「私の技は真似するな」といった

新書ながら、これだけリストに迫ることができる点。

あたかも19世紀のヨーロッパの薫りが立ち上ってくる
ような感覚に浸れるのは、一重に著者の力量でしょう。

リストが好きな方はもちろん、そうでない方こそ、
一度お読みになると世界観が変わるかもしれません。

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『 フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか 』 浦久俊彦・著

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